【※ネタバレ全開】映画『THE FIRST SLAM DUNK』感想・あらすじ・賛否の理由
こんにちは、山田です。
今回は、映画『THE FIRST SLAM DUNK』を見た!ということで完全ネタバレでの感想を述べていこうと思います。
なのでもしもまだ見ていない・ネタバレはやめてくれという方がいましたら前に書いたネタバレ無しの感想記事をご覧ください。
本記事は、映画を見た上での記事参照をおすすめします。
▽関連記事:ネタバレ無しはこちら▽
ということで、目次です。
あらすじ
湘北高校バスケ部は、全国大会の第2回戦を迎えていた。
相手は高校バスケ界最強・秋田県代表「山王工業高校」。
連載時に社会現象にまでなった熾烈な戦いを初の映像化。
その中で、宮城リョータのこれまで半生が明かされる。
感想
ついに映像化した山王戦
ということで解説していきます。
早速究極のネタバレなのですが、この映画で映像化したもの、
ズバリ「山王戦」でした。
原作全国大会編でのラストバトルでありこの作品の集大成、山王戦。
いやいやいやいや、面白かったです。やってくれました。
僕はずっと待ってました。
山王戦だけで何回読み返したことでしょうか。
OPテーマがかかる画面、鉛筆タッチから徐々に描き出される、湘北の面々。
「湘北高校」(ドドン!)
ここですでに興奮しているのですが、次に描かれたのが、河田・沢北・深津・一ノ倉・ポール。
「山王工業」(ドドン!)
(効果音の感じは映画を見た人ならわかると思います。)
思わず「やりやがった!」
叫ぶかと思いました。
ありがとうございます。
ほんとに元気なうちに見られて良かった。
とはいえですね、言いたいことはあります。
「豊玉戦も見たいよ」とか。
まぁでもこれはこの際良いんじゃないですかね。
これが見られただけ良かったと自分は思います。
試合も多分40分やってますよね(やってなかったらすみません)。
CGもね、臨場感が本当の試合みたいでした。
そんな感じで山王戦が描かれたよという話でした。
良かった。
宮城リョータの半生に見る原作の余白と作家性
ネタバレ2ですが、この映画作品における主役は「宮城リョータ」でした。
前評判通りでしたね。
この作品では山王戦を描きながら、リョータの半生が描かれました。
情報を抜粋すると以下の通り
・リョータは沖縄生まれ
・父・母・兄・リョータ・妹の5人家族
・しかし父と兄を沖縄で亡くす
・兄は生前バスケが上手かった
・リョータはバスケで兄のように上手く出来なかった
・母とリョータは兄の死を通じてそれぞれの葛藤をかかえていた
・家族は生き方を模索し神奈川(藤沢あたり)に転居
・学校や家で上手く振る舞えないリョータ
・中学生時代の三井に公園のコートで出会う(兄を重ねる)
・高1、ゴリに出会い反目しながらも認め合う
・高2、三井軍団にボコられる
・原付で事故り生死の境で沖縄の幻想を見る
・なかなか素直になれず、母とは軋轢
・沖縄を訪問、兄の面影に泣く
・兄とは昔、山王工業と戦うことを話していた
・葛藤に向き合い己を鍛える(完全にロッキー)
・全国大会前、母に手紙を書く
・山王戦に挑む
映画で描かれたのは、大体こんな感じ。
もう完全に主人公です。
半生は連載時には全然描かれてないですが、沖縄での話は井上先生の読切『ピアス』を踏襲して膨らませてる感じですかね。『ピアス』は98年の作品で、兄を釣りで亡くしたりょうたくんが出てきます。まさに井上ワールドですね。
うーんしかしですね、映画を見て「受け入れられない」という人がいるのも分かります。スラムダンクで何見せてんだと。
宮城は彩子に軽口叩いて試合開始早々アリウープのパス出しちゃうお調子者だろと。
「重すぎるわ」と。
とはいえ、我々は、井上雄彦先生の『リアル』とか『バガボンド』を知ってしまっています。「スーパーマンに見える人も実は何かを抱えて一生懸命前向きに生きている」ということを知ってるわけです。
様々なファンがいますので、キャラクターの性格形成に関わる原作改変・追加設定は手放しで素晴らしいと言えることではないとは思いますが、今現在の井上先生の作家性を考えると、伝説となってしまった自分の作品のリブートに向き合うにあたって、原作の余白が『痛み』で埋められたことにも納得出来ます。
ちなみに井上先生は、映画制作に当たってブログ記事を執筆されており、その中で「過去の思い入れのあるキャラの人生がまだまだ浮かんでくる」ということはおっしゃっていました。
先ほど紹介した読切の『ピアス』では「りょうた」に加えて「あやこ」が出てきます。気になる人はYOUTUBEで見られます。
自分としては、そんな彩ちゃんの半生も描いてみて欲しいですね。
コメディ部分の排除がもたらしたもの
先ほど述べた通りこの映画は「山王戦」をそのまま映像化したものですが、大きな違いもありました。
漫画『スラムダンク』に見られた二等身キャラによるギャグパートは一切入っていないことです。ゴリのゴリラ化も無し。
ちょっとギャグっぽいのは、桜木が流川にパスを出さないで彩子がペンを落とす部分くらいだったと思います。河田弟のファニーな様子や彦一姉弟をはじめとした狂言回しキャラも一切カットでした。
尺の問題もあるのでしょうが、これにより、今回はスラムダンクの山王戦という映像コンテンツが「より現実的な人間ドラマ」「スポーツもの」に仕上がっています。
さらに前の項で述べたように、映画を見ている観客は宮城の決して明るくない半生をバックグラウンドで見ています。このことがスラムダンクを「よりソリッドな映像作品」にしています。
ただこれは一長一短あって、2時間尺で見るには見やすいですが、少年漫画的ではなくなったと憤る人もいるでしょう。
正直好き嫌いですが、さきほどと同様に作家性に照らし合わせると「今のスラムダンクはこう」という感覚で受け止めるのが良いのかと思います。あくまで表現手法であって話の本筋は変わってないですし。
とはいえ、いつか原作通りの全国大会もアニメで見たいなと思うのも正直なところです。
客観的に見た桜木と流川
この作品は宮城のバックボーンが語られるため、彼に感情移入する作りになっています。なので、桜木や流川を漫画よりも一歩引いた目線で見ることができます。
見方が変わるんですよね。
この映画の面白いところです。
そんな感じでちょっと桜木を客観視すると、彼はやはりものすごく問題児ですね。
良い意味でも悪い意味でも。
臨場感あるリアルな試合の映像の中で「机に飛び乗って叫ぶ」という姿には狂気すら感じました。漫画では積み重ねがあるのでそんなに狂ってるなとは思わなかったですが。
良い面としては、山王の強さに対して常識に囚われ心が折れそうになる宮城にとって、桜木が起爆剤になるのは分かります。「こいつすげぇな」って。
「これで勝つしかなくなったな」
私の好きな言葉です。
次に流川。
仙道との回想とか、セリフによる心理描写とかはほぼカットでした。
そうすると流川はあんなに無口なんですね。笑
それでいて心理描写がないと、流川って本当に何を考えてるか分からないキャラなんですが、ゲームメイクする宮城からしたら、圧倒的な沢北を前に進化する途方もない後輩・流川は心強かったでしょうね。
流川のキャラデザインもちょっと芋っぽいというか、イケメンだけど高校生っぽい感じになっててかわいかったです。
このように表現方法が整理されて見方が変わると、流川や桜木の様子が違って見えるのはとても面白い体験でした。でも、桜木の「好きです。今度は嘘じゃないっす。」はカットしなくても良かったんじゃないですかね。
桜木が主役じゃないから仕方ないかな。
ラストシーンについて
さて、ラストシーンについてです。
宮城が大会を終えて湘南の海岸で母と和解したシーンのあと、沢北のアメリカ挑戦の様子が描かれるのですが、対戦チームの一員として現れたのが、なんと宮城でした。
沢北は試合途中に大会前の様子が加筆されるなど、この映画ではちょっとフューチャーされていましたが、まさかリョータがアメリカに来るほど主人公してるとは。
井上先生はリョータと沢北が好きなんですね。
これに反発感を感じる方は多いかもしれないなと思ったラストではありました。
というのもアメリカで相対しそうなのは原作でいうと流川っぽいですよね。
原作的には大会後リョータは湘北のキャプテンになったわけなので、内容で齟齬があるなと感じました。
リブートだから漫画版とは違って宮城の形にしたのか、「THE FIRST」つまり原作原案はそもそもこういう話だったのか、この辺りはインタビューなどが出れば見てみたいです。
ただまぁ個人的な感触としてはですが、よく読んでいた『キャプテン翼』で翼くんはプロになってゲームと漫画で全然違う国とかチームに行ってパラレルワールドしてたので、そんなに違和感は無かったと思いますよ。
なのでファンも「そういう未来もあるよね」って感じで重大事案に考えなくても良いのではないでしょうか?
声優、音楽問題
最後は映画化に際して物議を醸した問題です。
前に書いた感想記事では別に気にならないと言っていましたが、正直見るのに二の足を踏んだ原因ではありました。
しかし声優問題は是か非かで言えば、「仕方ない」の一言に尽きます。
ゴリ役の梁田清之さんが亡くなられたこともあります。
ご冥福をお祈りいたします。
とはいえ、声問題は作品上気にならないのは本当です。
作品を見てはっきり言えることは、「若手の人気声優を起用して客寄せ」などとはこれっぽっちも感じなかったということです。
みんな良かったですよ。
一緒に見た人は「やっぱり桜木は違和感があった」と言ってました。
確かにそう言われればそうかなと思う一方、みんな変わってるし一人だけ同じでもなと思ったりもしました。
というかそれよりも山王戦に心躍ってそれどころではなかった笑
前の記事も書きましたが、これは「見て判断」で良いと思いますよ。
テーマ音楽に関しては「結局作品の雰囲気と合うか」なので、この映画でラブソングはが入る余地はないわけで。
なのでこれも仕方ないとしか言いようがありませんでした。花道が主役じゃなくて恋の要素が全く無くなりましたからね。
今回のOPもEDも無骨で好きですけど。
以上です。まとめます。
まとめ
ということで、ここまで感想をまとめました。
取り留めがなかったですが、今回の映画を一言でいうと、井上先生自身による「同人誌的発想によるリブートスラムダンク」といって良いと思います。
個人的には山王戦を映像で見られたので臨場感や名言の数々を楽しむことが出来ましたが、展開やストーリーラインがやや変わってしまっている部分は否めません。
なので先ほども述べましたが、「こういうスラムダンクもある」くらいの立ち位置で眺めてそれなりに楽しむのが良いのではないかと思います。
認めないみたいのも全然ありだと思います。僕は作者先生が作ったものは全て正史だとか全く思わないですし、そもそも漫画原作がイイと思っている人にとって(たとえ思い出バイアスがかかっていても)好きなものはそのまま好きでいいと思うんです。
井上先生の作った今回の「苦悩する若者の人間ドラマ」も良いですが、原作の「青春スポーツ少年ジャンプ漫画」の雰囲気だって最高じゃないですか。
そんなわけで山王戦に興奮した反面、冷静になってみるとリブートの意味についても考えさせられた映画でもありました。
みなさんも楽しい映画体験になったのなら幸いです。
ということで今回はここまで
それでは
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